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コラム column

トムソンといっしょー21

Tale of Tomson-21
トムソンといっしょ-21

お母さんに抱かれて病院に行った。入る時は怖くってぷるぷる震えてしまった。病院に来るのはいつだって怖い。予防注射や採血検査なんかで痛いことばっかりなんだもの(>_<)。 エコーとか採血とかをやってもらったら、肝臓が悪いことがわかった。ALT とAST とが900 以上もあって、お腹が腫れていたのもそのためだろうと分かった。だんだん歩くのが大変になって体が細くなっていくのが分かった。眼も見えなくなって、壁伝いに歩くんだけど、時々椅子やテーブルの脚にぶつかったりする。だからもう駆け回ったりは出来ない。   

ゆっくり、ゆっくり歩いて、階段は、一段ずつ上って、トイレに行ったりする。お母さんが後ろからついてきてくれる。すごく安心(*^_^*)、 だって、降りるときに3,4段踏み外して転げ落ちたことがあるんだ。ケガはなかったけどさ。「老犬介護が始まったね」なんて言ってる。
お父さんが僕の体や脚をさすって、「こんなに細くなってしまったよ、筋肉ががっしりついていたのに、かわいそうに、こんなに細くなってしまったら、もう歩くのだって大変だ。おまえは偉いなあ・・・「がんばれ!トムソン」って声をかけてくれる。家族の夕食の時にはお父さんの足元に行って体を摺り寄せて寝そべっている。「お前がそこに来ると脚を動かすことも出来ないなあ」なんて言ってるけど、お母さんに「結構うれしいんでしょう!」なんて言われてまんざらでもないようなんだ。僕は家族の体温と気温とを感じながらウトウトしている。夜は静かに進んでいく。
僕は、空間的にも時間的にも出来るだけみんなの側にいたい。僕の体温を感じてもらって、みんなの体温も感じたい。こうやって、自由に動き回れるのもそう長くはない気がするんだ。もう少しだけでいい、神様が僕にお父さんお母さんと過ごせる時間を、きっとくれると思っているんだ。

お父さんのチェロの音が聞こえる。今日の響きはわりといいかな。音痴の素人でも10年以上も習ってたら、少しは良さそうな音も出てくるんだよね、きっと。カザルスの「鳥の歌」や「シチリアーノ」、さだまさしの「無縁坂」やシャンソンの「バラ色の人生」もいいけれど、僕には「アメージンググレース」がいいな、どういうわけかあれが聞こえてくると、遠吠えが出てくるんだ。自分でもびっくりしたし、みんなも驚いたよ!きちんとお座りして、顔を高く延して、「ワオ~ンン、ワオ~ンン」って、出せるだけの声で遠吠えしてしまった。家族のみんなが唖然といった面持ちで僕をみていた。前世の記憶が蘇ったのだろうか?悲しいような、敬虔であるような突然の衝動で声がでて、遠吠えになった。僕の声が家じゅうにこだまして家全体が振動していた。地震?!とみんな思ったに違いない。と、家族の顔を見たけれど、「え~っ! どうして、どうして??トムソンすごい!」といって、僕の顔を見て手を叩いていた。パチパチパチ(#^.^#)
2011年冬

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